ショウガ科;植物精油の歴史とその医学的作用・抗がん作用・抗炎症作用・抗酸化作用

カンフェリア

カンフェリア:KAEMPFERIA, ROTUNDA/ANGUTTIFRIA/PANDURATA (和名バンガジュツ)

精油 (VOLATIL, OIL) カルコン誘導体(ポリフェノールの一種)と抗がん作用

ショウガ科の植物に含まれる精油 (VOLATIL, OIL) の効果により、ガン細胞不活動やガン細胞の破壊が確認され、注目されている植物精油ですが、 人類が植物精油を利用したその歴史は非常に古く、紀元前にまでさかのぼります。

それは古代エジプト時代から始まったといわれています。 ミイラ造りに使用された抗菌性の高い乳香 (ムクロジ目カンラン科の樹液)や、ミイラの語源となったと言われている、 ミルラ(ミルラノキ属の樹液) が、 防腐剤として古くからつかわれてきました。

ショウガ科の植物は中国では、紀元前から健胃薬として用いられており、16世紀にはイギリスでペストが流行した際に、ショウガを摂取していた人が、 病気にかからなかったという記録もあります。

植物精油の医学的な利用

やがて、10世紀になるとアラビア医学のなかで、 植物精油の分離が始まり植物から分離した蒸留精油が中東医学のなかで広く使われだします。中世ヨーロッパでは初め精油は香水として利用されます。 1920年フランスの香料研究者、ルネ、 モーリスガットフォセがラベンダーの精油にヤケドを治す効果がある事を偶然に発見し、 1928年 AROMATHEROPY という本を著し発表します。

植物精油アロマテラピーは心身のリラックスやスキンケアに効果があるとして、 その後ひろく世界に広がっていきました。 日本でも、古くから珍重されてきた香木、 ビャクダンや、ジンチョウゲ科の高木ジンコウ、フタバガキ科の高木リュウノウジュ等の成分もすべて精油です。

またクスノ木から分離した樟脳なども同様に精油成分ですし、樟脳からは後に薬剤のカンフルが造られます。

植物の医学的な利用は古くから体系化し、アジアでも有名な著書として伝わっています。 インドのアーユルベーダー、 中国の漢方書などがそうです。 アスピリンで有名な柳の樹皮の効果なども、4世紀ごろには、中東ですでによく知られていたそうです。

ポリフェノール(フラボノイドを含む)

1992年フランスのボルドー大学の、 セルジュ、レヌー教授が植物に含まれる香料や苦味成分に、優れた抗酸化作用と、 心臓病の予防に効果のある物質ポリフェノールが含まれている。 と発表しその薬効が評価されると、 世界中の研究機関が芳香族ヒドロキシシ化合物 (ポリフェノール)の種類と、 その効果について研究しはじめ、 現在では、 その数も数千種類を超えるといいます。

ショウガ科の植物で、 漬物や香辛料として使われるウコンの色素成分、クルクミンもポリフェノールの仲間です。 当初は、精油(アロマオイル) の利用方法も、香水やスキンケアといった利用法が主体でした。

しかしその植物の香りを構成する個々の成分に、 新薬の可能性がある事がわかり、 芳香族についての研究が、 世界中で注目される事となります。 芳香族に共通している特徴は、優れた抗酸化作用や抗菌作用にあります。 特にある種類の植物は、 抗生物質のような高い抗ウイルス作用が確認されました。 同時にその成分がガン細胞の増殖を阻害し、 人の遺伝子の損傷を防ぐという優れた効果のある事も、 現在では確認されています。

植物毒アルカロイド (窒素原子を含み塩基性を示す有機化合物)の抗ガン剤利用

植物アルカロイドの利用も古く中国の三国時代の医師であった華陀 (三世紀) が、 麻酔薬を用いて開腹手術を行なったという伝承や、古代インカ時代に麻酔薬を用いて脳手術を行なっていたという説もあります。 日本では華岡青洲 (1760-1835) が、 1804年に朝鮮朝顔や、トリカブトのアルカロイドを分離し、 全身麻酔による乳癌の摘出手術を行なった事は良く知られています。

その後ヨーロッパでは、 ドイツの薬剤師、ゼルチュネルが1804年にアヘンからモルヒネを分離抽出し、広く医学に植物毒アルカロイドが使われはじめました。

最近では植物アルカロイドの作用に、優れた抗ガン作用がある事から、抗ガン剤としても用いられています。 しかし、 その多くは有効成分を化学的に合成し、 その成分を濃縮したものが多く、 強い副作用がある事も事実です。

抗がん剤に使われる植物として、 イチイ木、カンレン木、 メギ科植物、 ニチニチ草、等。

抗がん剤の種類/名称:イリノテカン、エトポシド、 ドセタキセル、ビノルルビン、ビンデシン、ノギテカン

ショウガ科植物カンフェリア (和名バンガジュツ) の抗がん作用

細胞の変異 (ガン化)

正常な細胞が悪性腫瘍 (ガン) 化する場合には、 複数の因子が関わることは、既によく知られています。 そのなかでも特に、 悪性腫瘍 (ガン) 化する重要な原因としては、放射線、紫外線、 ウイルス、 化学物質、 等が挙げられています。

60兆ある人体細胞のなかでは、老化した細胞は常に死滅して、 新しい細胞に置き換わるという再生が繰り返されています。 その再生回数は生涯で約50回ほどであるという説があります(テロメア)。

しかし、この過程でコピーされる遺伝子 (DNA) にもし何らかの欠損 (DNA損傷に起因しない場合も稀にある) がある場合、再生された細胞に、 変異が生じる事となります。

人体のメカニズムが正常な状態であれば、 その様な、 変異細胞は細胞死 (アポトーシス) や、 細胞分裂停止を起こし、正常に維持されるはずです。 しかし突然変異により、この秩序を乱してしまう、 変異細胞があります。 死滅すべき細胞が死滅せず、 無秩序に細胞増殖を繰り返し、 過剰な細胞の塊を形成して腫瘍をつくり、身体の他の部分へと、転移し生命活動を脅かすこととなります。 それを、 悪性腫瘍 (ガン)と総称します。

芳香族 ケトン

ショウガ科の植物、 カンフェリア (ROTUNDA, GALANGA, PULOHRA, PANDURATA,etc)は芳香族ケトンに分類される有機物カルコン(ポリフェノールの一種)を豊富に含んでおり、古くから抗炎症、 抗菌、抗バクテリアに有効であることはよく知られていました。

1999年にはこの精油成分が、悪性腫瘍(ガン)にも効果があり、ガン細胞の増殖を阻害し遺伝子の損傷を防ぐ事が解明され現在では、日本を含む世界中の研究機関から注目を集めています。

精油成分とは十数種類を超える、 有機化合物 (ポリフェノール等)で構成されています。 この成分は悪性腫瘍(ガン) の要因となる、ヒトパピローマウイルスHPV)やピロリ菌、 肝炎ウイルスの増殖を抑え、 変異細胞(ガン)の増殖に関わる、リボソームの活動を阻害 (RIP) することが判っています。

リボソーム阻害剤

60兆にも及ぶ人の細胞の再生に関わっているのが、リボソームと呼ばれる蛋白複合体です。 しかしこのリボソームは、ガン化する変異細胞の細胞増殖にも関わっています。

DNAから送られた情報をRNA(mRNA)が転写し、翻訳という過程を経てアミノ酸を結合し酵素によりペプチドの結合からタンパク質へと変化します。 無秩序に増殖する変異細胞 (ガン)も、同様なプロセスをたどります。

そこで、注目されたのが、 リボソーム阻害剤です。 リボソーム阻害剤として、 微生物が産出する物質、アシグリコシド系化合物の抗がん抗生物質もあります。 アクチノマイシン、イダルビシン、ダウノルビシン、 マイトマイシン、リボソーマルドキソルビシン、 etc 等多数の抗がん剤が開発されています。

リボソーム阻害剤として有名なのは、ヒマシ油の原量となるトウゴマの種子から抽出されるタンパク質の一つリシンで、現在では医薬品として利用され始めています。

人の悪性腫瘍などの治療に使う為には、出来うる限り副作用が少なく正常な細胞には無害で,ガン細胞やその原因となる病原菌の増殖を阻害するという必要があります。

そこで注目されてきたのがショウガ科の植物に多く含まれている、 芳香族ケトンに分類される有機化合物カルコン(ポリフェノールの一種)です。

病原細菌やガン細胞に対しては効果が高く、 人の正常細胞に対してはその毒性が限りなく低いことから、すでにガンの予防や治療に多く使われ始めました。

この植物がショウガ科の植物カンフェリアで、和名をバンガジュツといいます。

この仲間は古くからアジア全域で栽培されていて、その種類も非常に多く確認されています。

日本への渡来の歴史も古く江戸時代にはすでに栽培されていたと記録されています。 東南アジア地域で日常的に香辛料や薬として使われる、オオバンガジュツ、 ゼドアリア、 クルクママンガ、もカンフェリアの仲間です。

カンフェリア(和名バンガジュツ、オオバンガジュツ)の有効成分とその効果

薬効の高いカンフェリア類は、東南アジアの広い地域で古くから薬草として栽培されています。

主なものでも、 GALANGA/PANDURATA/PULOHRA/ANGUTTIFRIA/LAOTICA, 等多数にのぼります。

もともとその用途は、優れた抗ウイルスや抗菌作用があることから、 感染症や食中毒、ほかに打撲の湿布剤として用いられてきました。 近年では抗腫瘍の効果があることから、 悪性腫瘍’(ガン)治療によく用いられています。

精油の有効成分は、

BORNEOL,SAPONIN, CINEOL,ZEDOARONE,,CANPHENE,CUREMIN, CURDION,ASIRIOIL,(PIPERITON PSTMENSOL, VERBENON, KORIFILEN, KARIOFILEN, OKSIDA)etc 等です。

この植物から抗腫瘍の効果がある生理活性物質、 カルコン誘導体が確認された事から注目が集まりました。

特に野生種(ロットンダ)はその成長が非常に遅く2~3年の株でも、小指の第一関節ほどしかありません。

カンフェリアは花の咲き方に特徴があり、 花は地面から直接に葉よりも先に蕾が出て開花し、僅か一日ほどで枯れてしまいます。 ほんらい植物の花は開花することにより香りや色で、 鳥や昆虫を呼び受粉や種子の運搬を託します。

しかし、 カンフェリアは開花しても種はつかず、しかも株で分かれて増えるのでなぜ開花するのか良く判っていません。

豊富な精油を蓄えるのは、 熱帯雨林のカルスト台地という劣悪な環境で生息している為、 害虫やカビ (真菌)から、 植物を守ると同時に、乾季の厳しい太陽熱から株を保護するためと思われます。

またこの植物は親株の周囲に十数個の澱粉の株 (塊茎) を持っており、 乾季が長引いても株が枯れる事はありません。

chan, Minui” とガジャマダ大学の研究グループによる論文が、 ニューヨークタイムズに発表されました。 それによると、 その豊富な複数の (精油) ポリフェノールによる効能効果は、

1) RIP (リボソーム不活動プロテイン) 効能

A:ガン細胞の増殖を防ぐ (不活動) をつくり出す効果が認められている。

B:人体中の正常な細胞を壊さずにガン細胞のみを破壊する効果が認められている

C:ガン細胞の増加を止める効果が認められている。

2) Anti-oxydant 抗酸化物質

遺伝子の損傷を防ぐ抗酸化作用。 脳神経細胞の保護 ( 痴呆症対策)

3) Anti-curcumin 抗クルクミン

炎症や感染を防ぐ効果。

4) Cancer (ガン)

肺、肝臓、 子宮、 乳、 脳、 白血病、 その他ガンや腫瘍に関わる病気。

5) Internal-Infection 内部感染

痔、 のど感染、 肝炎、気管支炎、扁桃腺, 生理痛、糖尿病、喘息、にきび。

6) Other-usefulness Anti-Fat その他の有用性

高血圧、脳出血、 心臓病の予防、コレステロールの減少

注・この植物は株が白い事から、日本では白ウコンとも呼ばれています。 この論文は日本の、 DEPARTEMENT, OF.PHARMACOLOGY.TOKYO. SCHOOL. OF. MEDICINE.JAPAN. からも公表されています

*妊娠されている方や、 胆石の疾患のある方が、 摂取することは避けてください。

現在では、 カンフェリア類は上記の疾患の予防や治療に、 生薬としてアジアで広く用いられています。

日本では、 食品総合研究所、 国際農林水産業研究センターのグループにより、有機溶剤で、オオバンガジュツより分離抽出したカルコン誘導体を、 医薬や化粧品に添加して用いる方法が検討されています。 また、ショウガ、パパイア、パイナップル、キウイ、イチジク、 等にふくまれるタンパク質分解酵素、 PROTEASE (プロテアーゼ) の成分を利用した新薬ブリジスタナイーブ HIV プロテアーゼ阻害薬 (アメリカ) は、 臨床医学ですでに多くの実績をあげており、日本でもこの新薬による、 肝炎の治療がすでに始まっています。 (asian, crocus)

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