カンフェリア・ロットンダ(野生種)とアングスティフォリア(栽培種)の代表的な薬効成分

カンフェリア

Kaempferia.rotunda.I&Angutifria (Angustifolia)

この植物の日本への渡来は古く、江戸時代には既にその記録を確認する事ができます。 しかし、 熱帯地域が原産のこの植物は、日本の気候では栽培が難しく、定着しませんでした。 名称も当初は、「コンチョロ」と呼ばれ、その後、 その頃に日本に渡来していた、ドイツ人、ケンペルに因んで、「ケンペリア」 と呼ばれはじめました。 更には分類も明確ではなく、 ウコン属ではありませんが、 バンウコン、 と分類され、後に、バンガジュツ属に分類されます。

現在ではカンフェリアは独立した種で、ショウガ科カンフェリア属、 として分類されています。

日本では栽培が難しく、 さらに希少植物であったために、 薬効成分の研究もされていませんでした。 しかしヨーロッパ特に、イギリスやオランダ、ドイツなどでは早くから、 研究の対象となっていました。

イギリスは数十年前に既に、白血病に効果のある成分、シネオールの存在を証明し、更に、近年では、オランダ、ドイツの研究機関も複数の制癌作用のある物質を確認しています。

1992年フランスのセルジュ・レヌーにより、 植物に含まれる抗酸化物質、 ポリフェノールの効果が注目され研究が進むと、 カンフェリアの高い抗酸化や抗癌作用は、複数のポリフェノールによる効果と証明されています。

ポリフェノール

・複数のフェノール性ヒドロキシ基を持つ植物成分で現在では確認されているその総数は、 約5000種に上ります。

ほとんどの植物に含まれる、 色素、香り、 苦味、 等の成分で、高い抗酸化作用があり、動脈硬化や脳梗塞を防ぎ、体内のホルモン促進作用が向上するといわれています。

カルコン

・芳香族ケトンに分類される有機化合物のひとつ。

自然界にはカルコンの構造を持つ様々な誘導体があり、その中には抗バクテリア性、 抗菌性、 抗腫瘍性、抗炎症性を持つものがあります。

・カンフェリアは、成分のフラバノンから高い抗腫瘍のカルコン誘導体へと変換されることが確認されています。 特にこの植物は、腫瘍ウイルスに効果が高いといわれています。 制癌作用。

フラボノイド

天然に存在する有機化合物で、 カルコンから派生する植物二次代謝物の総称。 ポリフェノールと呼ばれる化合物よりも、大きな化合物グループの総称。 (植物の色素成分である、アントシアニン、カテキン、 フラバン)等で、付着する糖のバリエーションを考慮すると、 7000以上の構造が知られています。 高い抗酸化作用。

シネオール

・カンフェリアの成分で早くから確認されていた物質で、ユーカリ属の植物の主成分。 高い濃度であれば人体には有毒だが、適量であれば薬となります。 咳止め、炎症や、痛みの緩和、白血病 (HTLV-1)の増殖を止める、 効果が確認されています。 制癌作用。

シクロヘキサン誘導体

・カンフェリアからは複数のシクロヘキサン化合物が確認されています。 その薬効作用は侵害受容性疼痛と、神経因性疼痛の双方の痛みに対して、強い鎮痛作用を有しており、更に、その高い抗酸化作用は、 皮膚外用剤として用いると皮膚メラニンの沈着を防ぎ、 美白に優れた作用があるといわれています。

プロトカテク酸

・ポリフェノール抗酸化剤の一つ。 ヒト白血病細胞および悪性 HSG1 のアポトーシス(細胞死)を誘発するが、 濃度と暴露時間によって、 腫瘍の成長を減退、若しくは、 増進させることも判っています。 また、 神経幹細胞を増進させ、アポトーシス (細胞死)を阻害することが報告されています。このことはクルクマ属(ウコン)の色素成分、クルクミンでも報告されています。 抗・抗酸化作用。

クエルセチン&ケンペロール

・フラボノイドの一種で配糖体、茶、ブロッコリー、 玉ねぎなど多くの植物に含まれている色素成分。 高い抗炎症作用が確認されていて、 細胞増殖に関わるいくつかの酵素を阻害することが報告されています。 動脈硬化・制・抗酸化作用。

安息香酸ベンジル

・カンフェリアは、生息環境を整える為に自ら毒性のある成分(安息香酸ベンジル)を分泌する花を数回開花する。

・有機化合物の一種で、快い芳香を持つ無色の液体。 シラミや、 ダニを駆除する、 抗寄生虫性の殺虫剤効果。

香水の成分を保持する揮発防止、人工香料として食品添加物。

βーシトステロール

・植物ステロールの一種で、構造が類似していることから、以前はサポニンに分類されていましたが、現在では明確に区分されています。 コレステロールに類似した化学構造を持つ。

幅広い陸生植物に含有されていて、 例えば、 ノコギリヤシ、アボカド、カボチャ種子、カシュウナッツ、ダイズ,米糖、小麦胚芽、コーン油、クコの実、ペカン、ピジウム、シーバックソーンなどにも含まれています。

*経口摂取されると、コレステロールより先に胆汁酸と結合することによって、腸でのコレステロール吸収を抑えることにより、血中のコレステロールを減少させる作用を持つことから、米国では単独で、または他の植物ステロールと共に、 脂質異常症の治療に用いられることがあります。

日本では、β-シトステロールを含有する油含有食品が、 特定保険用食品として(コレステロールが高めの方に適する)などの表示の許可を取得しています。

*ヨーロッパでは良性の前立腺肥大症や、 前立腺、乳、などの治療に用いられることがあります。

* β-シトステロールを含むノコギリヤシ抽出物が男性型脱毛症の治療に有効であったとする米国の研究論文もあります。

*他の成分としては、俗名ボルネオール、カンファー、等が確認されています。 ボルネオール(和名樟脳) は、 クスノキの成分の名称ですが、 カリマンタン (ボルネオ島) に多く産するため、ボルネオール、或いは、 カンファーと呼ばれることもあります。

まとめ

カンフェリアは長く熱帯アジアで、 癌や寄生虫、感染症、 に用いられてきました。 1992年に植物ポリフェノールの働きが注目されると、 その高い抗酸化作用についても研究が始まり、様々な薬としての成分とその効果が確認されてきました。

カンフェリアで確認されている、 植物化合物は50~70種に上るといわれています。 その意味では、今後も新しい発見が期待できます。

しかし、有効成分だけを分離抽出し、 それを濃縮して使用することの危険も指摘されています。

植物は本来その活性成分と抑制成分 (酵素等) バランスよく持っています。 天然由来の成分を出来るだけ変化させずに、 その成分をすべて利用することが、より安全で効果的な方法と考えられます。

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