1 脂肪酸の化学
脂肪酸は通常脂肪、特に油脂などの一部として存在し、末端にカルボキシル基ひとつを持つ鎖状炭化水素であり、 一般式はR-COOH で表される。 炭素数によって短鎖、中鎖および長鎖脂肪酸と分類され、 分子内に二重結合がある場合は不飽和脂肪酸、ない場合は飽和脂肪酸と呼ばれる(表1)。
ラウリン酸については学者によって中鎖或は長鎖脂肪酸と分類が異なる場合がある。
2 中鎖脂肪酸研究の歴史
中鎖脂肪酸は母乳中に油脂の形で含まれ、紀元前1500年にはアーユルヴェーダ医学体系では母乳を点眼剤として眼の感染症に使用しています。
母乳中に中鎖脂肪酸が含まれる理由は、抵抗力の弱い赤ちゃんを外来微生物から守るためであり、中鎖脂肪酸の近代化学研究は19世紀末にはじまり、過去 30 年間 Kabara 博士のグループにより微生物に対する脂肪酸あるいはモノグリセリドの効果が検証されてきました。
また、最近ではココナッツオイルの研究から中鎖脂肪酸やモノグリセリドのAIDS 治療への臨床研究も開始されています。
3 中鎖脂肪酸の作用
中鎖脂肪酸の微生物に対する殺作用を一括して表2に示す。
種類 | 病原微生物名 |
ウイルス | ヒト免疫不全ウイルス(HIV) C型肝炎ウイルス(HCV) サイトメガロウイルス (Cytomegalovirus) Epstein-Barrウイルス (E-B virus) インフルエンザウイルス (Influenza virus) 麻疹ウイルス (Measles virus) ヒトTリンパ球向性ウイルス (HTLV-1) 白血病ウイルス (Leukemia virus) 肉腫ウイルス (Sarcoma virus) RSウイルス(Respiratory syncytial virus) ビスナウイルス (Visna virus) 小胞性口内炎ウイルス (Vesicular stomiatis virus) 重症急性呼吸不全ウイルス (SARS) (?) トリインフルエンザウイルス (Bird Flu virus) (?) |
細菌 | グラム陽性桿菌 (Gram-positive bacilli) ヘリコバクター・ピロリ (helicobacter pylori) 黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) 劇症型レンサ球菌、 A, B, F, G (Streptococci A, B, F and G) リステリア・モノサイトゲネス (Listeria monocytogenes) インフルエンザ菌 (Hemophilus influenza) ナイセリア (Neiseria) 肺炎マイコプラズマ (Mycoplasma pneumonia) クラミジア (Chlamidia) |
真菌 | 白癬菌 (Ringworm) カンジダ (Candida albicans) |
原虫 | ランヴル鞭毛虫 (Giardia lamblia) |
「Coconut Oil, Fats and Other Oils」 The “GOOD” and The “BAD", P106
by Conrado S. Dayrit, M.D., Philippines より、 一部改変
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