医学のルーツ:不老不死を追求したシッダ医学

健康医学

人類の植物生薬の利用は、 有史以前に遡るといいます。 始め人は食料として植物を採取していましたが、 その植物のもつ様々な特性にも気づいたことでしょう。 やがて植物の食料としての利用以外の目的として、植物の採取(一部栽培) を始め、薬用として利用していたという痕跡が、石器時代の遺跡から確認されています。

薬用植物の栽培とその記録

中東のテグリス・ユーフラテスに囲まれた肥沃な土地を利用して始まった、農耕や牧畜を中心とした世界最古の都市文明。 メソポタミアでは、紀元前3500年前の粘土板に、 当時栽培されていた200種類を超える植物生薬が記録されています。 やがてその知識は古代エジプトへと引き継がれ、 エジプト医学として体系化されていきます。

当時のエジプト医学では、外科手術や接骨、 そして薬局法などがすでに確立していました。

さらに紀元前3000年のパピルスに書かれた、数百種類の植物生薬のなかには、東南アジア(インド・インドネシア)が原産の、桂皮や安息香・香辛料など、 多数の植物が記載されています。これはインダス川~ガッガル・ハークラ川の周辺に栄えたインダス文明 (紀元前2600~1800年)と、メソポタミアやエジプトの間で、活発な交易が行なわれていたことを裏付けるものです。

この様な交易により、エジプト医学や植物生薬の知識がインド南部で発展したシッダ医学に取り込まれ、やがてアーユルベェダーの誕生に繋がる事にもなります。

不老不死を追求したシッダ医学

インドのタミール周辺に伝わる伝統医学で、 その起源は6000年以上遡ることができ、シッダ医学を発展させた人物の一人が、のちにアーユルベーダーを創設したといわれています。

その特徴は魂・環境・心・身体・社会の調和が完璧な健康を維持する重要な要素である。と説いています。

人間の身体は小宇宙であり、 それは大宇宙を構成する一部である。 重要な事は存在する全ての物との調和にあり、それを忘れなければ健全な人生を送ることができる。

と諭してあります。

また存在する全てのものは、一つの普遍な法則に基づいている。とも説かれています。

南インドで発展したこの様な哲学は、やがて仏教や道教の根幹をなすものとなります。

シッダ医学では全ての存在が、 五つの元素で出来ている、と説いています。

  1. 空(時間)
  2. 風(呼吸)
  3. 地(大地)

更に、身体には魂を保つための96の仕組みがあると。この五つの元素以外に

  • 五つの感覚器官(耳・皮膚・目・舌・鼻)
  • 五つの感覚 (聞く・触れる・見る・味・匂い)
  • 五つの動器官(手・足・生殖器・排泄・ロ)

これらの五つの器官を通して感じ取る五つの感覚と考えられています。

微弱な毒は免疫を活性化するとして水銀などの鉱物生薬を用いたり、人体に流れる生命エネルギーを淀みなく循環させる方法として、マルマ療法も生まれました。

不老不死を目指したシッダ医学が、後に中医学の針医療や、 陰陽五行思想として中国で確立していきます。

それはシッダ医学のグループの一人である、 ボーガナタルが中国に渡り老子となり、その教えを広めたからと言われています。

メソポタミアエジプトそして⇨シッダ医学から⇨アーユルベェーダー中国医学から⇨日本の漢方医学へと、土着の文化を融合しながら伝播していきました。

中医学と漢方生薬

中国王朝の起源は紀元前2000年に始まる夏后が、その始まりといわれています。 しかし中国では長く医療や薬草の文化はありませんでした。 そして中国ではこの事を裏付けるように、最古の中医学の書物である黄帝内経の真実は、現在では黄帝自身が神話伝説上の帝で、実在はしていなかったと中国でも結論づけています。

つまり中国の医学書は後世に書かれたもので、漢の時代以前には、医や薬という文字も存在していなかった、という事実です。

現在、中国の三大医学書といわれているものは、黄帝内経・神農本草経・傷寒論 ・ですがこれらの書物は、 後漢時代 (2世紀頃)に纏められたものです。

医療や薬草の文化も中国に伝わった後に、精霊信仰そして道教や神仙思想の影響を受け、 神秘主義的な要素が融合した、 独自の中国医学へと変化していきます。

日本に於いての医療の確立は、 平安時代の頃に大陸から渡来した仏教と密接な関係にありました。 渡来した唐の僧・ 鑑真和尚 (753年)や、禅宗の僧により生薬や医療が広められたそうです。

そして、 南インド周辺を起源とするシッダ医学や、マルマ療法は、ギリシャ医学とも融合し、やがて現代医学の基礎となり、同種療法 (ホメオパシー) 逆療法 (アロパシー) 自然療法・整体療法・心理療法・の、五つの流派として確立していきます。

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